TOP総合案内今月の伝道標語 > 伝道標語
伝道標語
緑水青山 是れ経行の処 渓辺樹下 是れ澄心の処なり

大本山總持寺では、毎年六月に 伝光会摂心会でんこうえせっしんえが行われます。伝光とは御開山瑩山禅師が撰述された伝光録にちなむもので、釈尊(お釈迦様)の本心である禅の教えが光の如く後世に真っ直ぐに伝わるさまをあらわします。53代の仏祖を経て瑩山禅師にうけつがれた禅の教えは伝光として、今日も總持寺の修行僧にしっかりとうけつがれています。その伝光を学び、坐禅を修行することにひたすら励む集中修行期間が伝光会摂心会です。

ところで、私はここ数年気になっている事があります。私は、平成二年に初めて伝光会摂心会を体験しましたが、その当時のほうが、雨の日も多く梅雨の最中の摂心会という感覚が強かったような気がします。気のせいかもしれませんが、ここ数年は摂心会中にあまり雨が降っているという感覚がなく、気温も高く真夏の摂心会というイメージが強くなったような気がしています。

そう言えば、今年の五月、関東では記録的に夏日が多い月になりました。参禅者もTシャツで参加する方も目立ちすっかり夏の景色に様変わりしていました。私も五月中に慌てて真夏の支度に衣替えした次第です。

そんな中、気候に関してたいへんショッキングなニュースが伝わってきました。インドが数週間にわたる熱波に襲われ、2000人以上が亡くなったというニュースです。気温が所によっては50℃近くになったそうです。インドはこの時期、暑くなる事は知られていますが、それでも平年より5℃以上高い日が続いたのだそうです。昨今の世界中の気候を鑑みると、明かに温暖化の影響だと思います。私は、温暖化がさまざまな不利益をもたらすということは頭では理解していました。しかし、それが原因と思われることでこれほど多くの犠牲者が、出たという話ははじめて聞いたように思います。

温暖化は、我が国でも普通に実感できるものとなりました。私が住んでいる地域は、関東の内陸にあり、猛暑の時は、気温が36、7度になる事があります。40年近く前、中学校の自由研究で、気温を計った事がありますが、どんなに暑くても、32、3度でした。私の実感では、明かに真夏の日中の平均気温が上昇しているようです。「心頭滅却すれば火もまた涼し」という禅の言葉がありますが、30度を優に超える禅堂の中では、さすがに気持ち良く坐禅をすることはできません。やはり古の禅僧たちが体験したであろう、真夏の緑蔭のなかで、渓流のせせらぎを聞き、木々の柔らかな風を受けながら坐る坐禅に私は憧れます。 この環境は總持寺が鶴見に御移転した104年前は、おそらく總持寺の周辺のどこにでもある環境だったと思います。しかし今は、特別な場にしか残っていません。このような時代と環境の変遷を考えると、少なくとも我々の使命は、気温も含めて、真夏に心地よく坐禅の出来る自然環境を、後世に残してあげることだと思います。まして、温暖化で多数の死者が出たというニュースを目の当たりにした今、温暖化対策と環境問題は、いよいよ待ったなしの段階に来たのだと思います。

表題は瑩山禅師が撰述された坐禅の指南書『坐禅用心記』の一節です。「緑深く、清水豊かな山間は、歩きながら禅を行ずる最適の所。水の音響く渓谷の辺り、生い茂る樹々の下は坐禅をし、心澄ますのには絶好の場所である」と言う意味です。そのような場所が、年々減少してしまうことは、人類にとってとても悲しい事です。後世の人の為に、真夏に気持ち良く坐禅が出来る場所と環境を、今後少しも減らしたくありません。

それでも總持寺の境内は、今もまだ、都会の中の心のオアシスと言える環境が整っています。この夏ぜひ一度訪れて、真夏の坐禅会を心深く楽しんでみて下さい。

平成27年6月(本山布教教化部参禅室長 花和 浩明)

ページ先頭へ

ホームページ記載の記事・写真等の転載はご遠慮ください
Copyright(c) Sotoshu Daihonzan Sojiji Temple All Rights Reserved
No reproduction or republication without written permission.