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伝道標語
身をみるは すなわち是れ心をみるなり。心をしるは これ身を證するなり。

数年前になりますが、ある女子高生から、「坐禅をしたいのですけれども、そちらで修行させていただけますか」という電話がありました。

私は、「毎朝、五時三十分から坐禅を行じておりますから、いつでも来たい時にいらしてください」と答えました。

すると、数日後の日曜日の朝、その女子高生は一人でお寺にやってきました。

早速、足の組み方や呼吸の仕方など、基本的な坐禅の作法を指導し、私と二人で二十分ほど坐禅を修行しました。

坐禅を終えて、一緒に朝のお勤めをした後、控室でお茶を飲みながら、彼女といろいろな話をしました。 ちょうど受験のシーズンを迎える時期でありましたが、彼女は、自分の希望する学校へ入学するには、今の成績ではちょっと厳しいのだけれども、なかなか勉強に身が入らず、心配と焦りばかりがつのって、家族にも八つ当たりするような状況だったんだそうです。

そこで、小学生の時に、夏休みの子供坐禅会に参加して、一度だけ坐禅を修行したことを思い出して、何とか現状を打破するために、もう一度坐禅を行じてみようと思い、すがるような気持ちで電話をしたということでした。

その後も、彼女は数回お寺に来て、私と一緒に坐禅を行じていきました。 やがて、その年の三月の末、彼女は母親とともにお寺に来て、「お陰さまで、無事に志望校に合格し、この四月から晴れて女子大生になります」と言いました。

その時の彼女の姿を見た時、私は一瞬、目を疑いました。

それまでは、あどけない少女であった彼女が、美しい大人の女性に成長していたからです。 確かに、お寺に来て坐禅をする時は、比較的ラフな服装でしたので、どことなく子供っぽい感じがあったのですが、グレーのスーツをきちんと着こなした彼女は、まさに大人の女性そのものでした。

「着ている服によって、こうも印象が違うものか」

私は、そう思いながら、しばらくその親子とお話しをさせていただきました。

すると、彼女のお母さんが、次のようなお話をなさいました。

「この子は、小さいころから朝が苦手で、毎日起こしてやらないと、いつまで経っても起きてこない子だったんです。それが、こちらで坐禅させていただくようになってから、自分で起きてくるようになりました。最近では、朝ご飯を作る手伝いもしてくれるようになりました」

私は、そのお母さんの話を聞いて、彼女が大人の女性に変わった本当の理由を知りました。それは、単に服装が変わったということではなく、生活が変わった、もっと言えば、生き方そのものが変わったからだったのです。

冒頭に掲げました瑩山禅師様のお言葉の中にある「身」とは、服装や格好といった外見的なことだけではなく、その人が日常をどう生きているかという、生き方そのものを指しているのだと思います。

つまり、その人の生き方(身)の中に、その人の人間性(心)が余すところなく表れている。また、その人の人間性(心)が、その人の日常生活(身)の中で育まれていく(證)ということです。

彼女は現在、ある病院の看護師として元気に働いています。

日々成長していく彼女を見ながら、私もまた、一仏両祖のみ教えに生きることを通じて、自らの人間性の向上に努めてまいりたいと思います。

平成28年3月(秋田県 洞雲寺住職 柴田康裕)

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